メニュー

第13回│アクルーアルの重要性

2018.11.26

 


こんにちは。

今年はエルニーニョ現象が発生し、平年より暖かい日が続く「暖冬」になる可能性が高くなるそうですね。朝晩は冷えますが、確かに日中はジャケットがなくても寒いと感じず、過ごしやすい日が続いています。

一方、株式市場はというと世界的に冷え込んでいます。ドイツ銀行のマクロストラテジストの発表によると、今年は1901年以来で最悪の年として記録に残りそうだと示しています。その根拠として、11月上旬時点で約89%の資産が米ドル建てで年初来下落していることが挙げられています。
我々M&Sも昨年に比べると短期的には厳しい環境が続いています。しかし、目先の変動に一喜一憂せずあくまで中長期的な投資観点を持ち、取り組んでまいります。

さて、今回は投資判断の材料として有用な指標を一つご紹介したいと思います。

 

「アクルーアル」

 

このブログをお読みいただいている方の多くが個人投資家だと思いますが、アクルーアルを重視されている方は多くないのではないでしょうか。

アクルーアルとは会計用語の一つで、決算上の利益と現金収支(キャッシュフロー)の差のことをいいます。
日本語では「会計発生高」と訳され、式にすると次のようになります。

 

アクルーアル=税引後利益(特別損益の影響を除く)ー営業キャッシュフロー

 

この数式で何が分かるのでしょうか。
ずばり決算上の
利益の質です。

 

一般的にアクルーアルは、企業の利益が「現金収入を伴う質の高い利益か」を見極めるためのもので、主な用途として企業の不透明な会計処理や粉飾決算を見抜くための指標として活用されますが、株式投資の判断材料としても活用されることがあります。

 

「利益は意見、キャッシュは事実」

 

会計上の利益は、会計ルールに基づいて売上から費用やら減価償却やら税金やらを差し引いた残りの数字です。会計ルールでは、固定資産の減価償却の方法や、資産の評価基準、評価方法など様々なルールが定められています。加えて、それぞれのルールで複数の選択肢が認められているため、どの選択肢を選ぶかにより会計上の利益は変化します。つまり、会計上の利益には、少なからず経営者の意見が反映されているということができます。

一方、キャッシュフローというのは、実際にその企業に出入りする現金の流れのみを示します。そこには会計方針の影響や資産の評価などの影響も受けず恣意性が介入できないため、事実のみが記載されます。つまり、キャッシュフローは事実を表しているのです。

したがって、現金収入の裏付けのある健全な利益を上げている企業は、アクルーアルはマイナスになります。
一方、プラス傾向が続くと現金創出が遅れていると判断できます。

 

PL重視の個人投資家

 

とりわけ個人投資家は、キャッシュフローより会計上の利益を重視する傾向が強い印象です。その結果、株価と本質的価値にミスプライシングが生じ、バブルを起こすこともあります。

その良い例が、直近話題になったRAIZAP(2928)ではないでしょうか。
「結果にコミットする」で有名なRAIZAP。軽快な音楽にのせて肥満体形の人がマッチョに様変わりするという印象的なCMは、そのインパクトの大きさから脳裏に焼き付きます。

2018年3月期の決算説明会用資料をみると、増収・増益と投資家としてはとても嬉しい内容でした。営業利益にして135億円の黒字です。

「6期連続増収過去最高(前期比+143%)、5期連続増益過去最高(前期比+133%)」
れだけみると、売上も利益もしっかりと伸ばし、とても理想的な推移にみえます。

一方、営業キャッシュフローはいかがでしょうか。

わずか8700百万円です。

135億円の営業利益に対して、事実としての現金収入は8700万円と大きな乖離があることがわかります。

 

先ほどのアクルーアルの計算式に当てはめると、下記の通りになります。

アクルーアル=税引後利益(特別損益の影響を除く)ー営業キャッシュフロー
      =135億円-8700万円
      =134億円

 

つまり、現時点では赤字企業の買収による「負ののれん」が営業利益を押し上げていただけで、現金収入を伴う質の高い利益ではなかったということです。

その結果、2019年3月期上半期の決算説明会資料をみると、営業キャッシュフローは△76億円と本業で稼げておらず、新規M&Aの原則凍結による営業利益の下方修正もあり株価は暴落しました。

 

今後は、過去2年間で52社も増加したグループ会社の経営再建が注目されることになりそうです。
このように、投資判断を行う際は決算上の利益の質を見極めることが重要になります。

今回は、会計上の利益が過大評価されたことによるミスプライシングが、株価にどのような影響を与えるかを紹介しました。

しかし、アクルーアルがプラスだからといって、必ずしも悪いというわけではありません。

この数値は事業の成長期に上がる傾向があるからです。また、企業の事業形態や経営戦略の違いにより性質が異なるため、事業内容の特徴を踏まえた上で参考にしないとあまり意味がないのです。あくまで、数ある投資判断材料の中の一つとして使うことが重要になります。

 

 

 

ページトップ